2020年9月27日、秦野市カルチャーパーク。
雷鳴とどろく豪雨の東海大記録会での出来事。
今夏に大迫傑主催の短期キャンプ「Sugar Elite short Camp」に参加した石田洸介選手は、「世界を目指す」と目をギラつかせていた。
その師匠とも呼べる大迫と共に出場した5,000m最終組、残り1,000mをトップ集団で通過。
そして鐘が鳴ったラスト1周でトップに立つ。
まるで師匠を食ってやろうとも思わんばかりのスピード。
最後の最後で大迫と鎧坂に抜かれはしたが、7月に自らが記録した高校記録をさらに上回る圧巻の13:34:74をたたき出す!
16年ぶりに5,000m高校記録を塗り替えた、大物中の大物、石田 洸介選手の活躍を振り返ります。
あわせて石田洸介選手のプロフィールや、中学時代からの主な成績も紹介します。
石田 洸介 東洋大学に進路が決定
東海、早稲田、はたまた実業団? と様々な噂が流れた石田洸介選手の進路ですが、2021年1月に正式発表があり、東洋大学への進学が決定しました。
今後4年間、酒井監督の指導を仰ぐこととなりました。
東洋大学の酒井監督と言えば、
- 服部 一馬選手
- 設楽 悠太選手
- 高久 龍選手
このようにフルマラソンで結果を残している選手を数多く育ててきた印象があります。
石田洸介選手はインタビューで
大学4年時に10,000mでパリ五輪を目指す
と宣言しており、10,000mを目指す石田選手と酒井監督の指導の相性が合うのか少し心配でしたが、よく考えたらそんな心配はご無用でした。
2020年の日本選手権で、教え子の相澤晃選手が10,000mで日本新記録を出していました…
さらには、設楽選手はオリンピックや世界選手権で10,000mの日本代表に選ばれていますし、同じく東洋大出身である服部選手の弟、服部弾馬選手も2018年の日本選手権5,000mで優勝しており、トラックで活躍する選手も輩出しています。
3年後のパリ五輪が楽しみになりました。
石田 洸介 気になる来年の箱根駅伝での活躍は? 出場はある?
東洋大学の酒井監督は、どんどん若手を起用する方針なので、すばり1年目から石田洸介選手が出場する可能性は高いと思っています。
ちょっと気が早いですが、何区に登場するのか、10区間で予想をしてみたいと思います。
2022年箱根駅伝1区出場の可能性⇒10%
まずは1区の可能性です。
私は1割ほどあると考えています。
どの大学もそうですが、1区には主要メンバーを投入する傾向があります。
石田洸介選手が入学した時点で、5,000mの持ちタイムは石田洸介選手がダントツで1番ということになるので、石田洸介選手はいきなり主要区間に割り当てられることとなるでしょう。
その中でも、2018年に西山選手が1年生ながら区間賞を獲得した3年前の再現を狙って、1区に投入する可能性は十分にあるとみています。
集団で息を潜めて最後にラストスパートをするという戦法というよりは、15km過ぎの鎌田の踏切前後で仕掛けてそのまま押し切るようなイメージでしょうか?
来年の箱根の1区で誰と対峙するかはまだわかりませんが、順大の三浦選手や中大の吉居選手と競っても負けない力を持っていると思いますので、個人的は1区を走って欲しいと思っています。
2022年箱根駅伝2区出場の可能性⇒5%
2区もあり得るとも思いますが、ここは前回大会で好走した松山和希選手のアクシデントがない限り、松山選手でいくでしょう。
箱根の時期は20kmの練習をするとは思いますが、日本インカレがある9月まではおそらくトラックの練習に特化していくと思うので、さすがに23kmを超える2区はきついかと思います。
2区を走る条件としては、
- 全日本大学駅伝の長距離区間(7区or8区)で快走する
- 松山選手のアクシデント
この2つが重なった時だけのような気がします。
2022年箱根駅伝3区出場の可能性⇒50%
おそらく3区が石田洸介選手が最も力を発揮しやすい区間ではないでしょうか?
3区は比較的下り基調なコースで、1区2区と違い、選手がバラけた状態で走ることになると思います。
石田洸介選手のレースを見ればわかりますが、彼は自分のペースで最初から最後まで走るタイプの選手です。
1区や2区での起用になると、一定の速いペースで押していくタイプの石田洸介選手は、ペーサーとして使われてしまい、他校の思うつぼになりかねません。
3区であれば集団ではなくかなりバラけた展開になっていることがほとんどで、かつ前の選手もある程度見える距離にいるので、石田洸介選手が前の選手を目標にしながらごぼう抜きをしていくという展開が十分考えられるでしょう。
2022年箱根駅伝4区出場の可能性⇒20%
3区に続いて可能性があるのが4区でしょう。
クロスカントリーのU-20チャンピオンの石田洸介選手は、アップダウンにも強さがあることが証明されているので、終盤にかけてうねりのある4区も適任だと思います。
3区と同じく単独走のできる石田洸介選手ですので、自分のペースで淡々と押していけるはずです。
仕上がりが順調なのであれば、吉田祐也選手が出した区間記録更新の可能性もあると思っています。
2022年箱根駅伝5区出場の可能性⇒0%
ここは最上級生になる山登りのスペシャリスト宮下選手が君臨する区間なので、出場する可能性はほぼないと思います。
2022年箱根駅伝6区出場の可能性⇒0%
近年最も区間で差が付きにくくなっている6区にエース級を投入する大学は少なくなっていますので、ここもほぼ0%といってもよいでしょう。
2022年箱根駅伝7区出場の可能性⇒5%
当時1年生だった服部弾馬選手を起用した、2014年の実績を考えると、7区での出場の可能性もあるでしょう。
ただし、復路に回る可能性があるのは、石田洸介選手の調整が上手くいってないか、ケガ明けの場合のみでしょう。
2022年箱根駅伝8区出場の可能性⇒10%
復路で最も可能性があるのが、酒井監督が近年1年生を最も多く起用している8区でしょう。
ここ数年8区で勝負が決まることが多く、本来往路に回るべき選手を8区に置いてくる大学が目立ちます。
石田洸介選手の場合は調整不足かケガ明けかの場合のみとは思いますが、遊行寺の坂を勢いよく駆け上がる石田洸介選手を見るのも楽しみな気がします。
2022年箱根駅伝9区・10区出場の可能性⇒0%
9区、10区は安定した上級生を起用する大学が多く、東洋大学も例外ではありません。
ここに石田洸介選手が起用される可能性は、ほぼないとみていいでしょう。
石田 洸介 ホクレンディスタンスで5,000m高校記録を更新
2020年4月26日、全国高体連は8月のインターハイ中止を決定しました。
さすがの石田洸介選手もこの時ばかりはやりきれない心情を吐露します。
それだけに、高校記録を破るということに対するモチベーションは半端なかったはずです。
緊急事態宣言が明けた7月。
石田洸介選手は北海道に飛びました。
毎年好記録が連発する、北の大地で行われるホクレンディスタンスで、石田洸介選手は5,000m高校記録に挑みます。
向かえた第1戦の士別大会では記録を意識するあまり動きが固くなってしまい、14分台の記録となってしまいました。
そして2週間後の第4戦千歳大会でドラマは起きました。
3,000m過ぎからペースメーカーをあおるように進んで行く石田洸介選手は明らかに調子が上向きの様子。
4,000m過ぎからはペースを上げた実力者の富士通塩尻選手にピタッとつき、理想の展開に。
そしてラスト1周でスパートしたHONDAの伊藤選手に負けじと2番手に上がる石田洸介選手。
そしてそのまま伊藤選手に続きゴールします。
タイムは高校新記録の13:36:89!!
2004年に仙台育英高校所属時に佐藤秀和さんが出した13:39:87を上回ります。
さらにその後の9月27日には自らの記録をさらに上回る13:34:74のタイムを記録し、燦然と輝く高校記録を残しました。
石田 洸介
全国高校駅伝では無念の失速
輝かしい高校記録を出した北の大地のレースから5ヶ月。
新型コロナウイルスの影響で無観客開催となった2020年全国高校駅伝。
石田洸介選手は1区で区間賞を狙います。
スタートと同時に石田洸介選手は先頭に出ます。
その後もハイペースで飛ばしますが、5km手前の登り坂で失速し、後続に捕まってしまいます。
その後もペースはあがらず、無念の区間14位に終わります。
この悔しさはきっと来年の箱根駅伝で晴らしてくれることでしょう。
石田 洸介 プロフィール
- 名前:石田 洸介(いしだ こうすけ)
- 出身:福岡県 遠賀町
- 身長:170cm 54kg
- 進路:福岡県浅川中学校
東農第二高校
東洋大学
スーパー中学生と呼ばれる
石田洸介選手は小学校5年生の時から地元の陸上クラブに通い始め、本格的に陸上生活をスタートさせています。
中学校の頃はスーパー中学生としてその名を全国に轟かせます。
現在も破られていない3つの中学記録を保持しています。
- 1,500m⇒3:49:72
- 3,000m⇒8:17:84
- 5,000m⇒14:32:44
日本人の中学生で初めて3分50秒を切ったことで有名になりました。
3,000mの記録は2017年のジュニアオリンピックで出した記録で、2着の伊藤大志選手と、3着の鶴川正也選手とは、3年後の5,000m高校ランキングでも1、2、3位になるなど、良いライバル関係が続いているようです。
1度は挫折した高校時代
スーパー中学生と呼ばれ、1年目からジュニアオリンピックでの優勝を経験した石田洸介選手でしたが、一転高校2年の秋までは苦難が続きます。
自分をより高みに連れて行ってくれると思い越境入学した群馬県の東農第二高校でしたが、思うような結果が出ません。
インターハイでは2年連続で入賞を逃し、周りから期待され続けるプレッシャーもあり伸び悩みました。
しかし2年生の11月、日体大記録会で5000m自己ベスト13:51:91をマークすると徐々に調子が上向きになり、翌年の福岡で行われた日本クロスカントリー選手権では、1学年先輩の佐藤一世選手らを差し置いて、U-20の部で大差で優勝します。
その後3年生になり、コロナウイルスの感染拡大で軒並み大会がなくなりインターハイまでもが中止になりましたが、前述の通りその悔しさを高校記録更新という形で見事払拭しました。
石田 洸介
主なレース結果と自己ベスト
自己ベスト(2021年2月現在)
- 1,500m:3.49.58 (2020年)
- 3,000m:8:17:70(2019年)
- 5,000m:13.34.74(2020年)
- 1,0000m:28.37.50(2020年)
- ロード10㎞:記録なし
- ハーフ:記録なし
主な記録と結果
2015年度(中学1年生)
第46回ジュニアオリンピック1,500m決勝
4:15:16【優勝】
2016年度(中学2年生)
第47回ジュニアオリンピック1,500m決勝
3:58:96【優勝】
第22回全国都道府県対抗男子駅伝2区3㎞
8:34【区間3位】
2017年度(中学3年生)
第44回全日本中学校選手権1,500m決勝
3.54.34【優勝】
第44回全日本中学校選手権3,000m決勝
8.32.50【優勝】
第72回国民体育大会3,000m決勝
8.35.48【第2位】
第48回ジュニアオリンピック3,000m決勝
8.17.84【優勝】
第23回全国都道府県対抗男子駅伝2区3㎞
8:14【区間1位(区間新記録)】
2018年度(高校1年生)
第3回ユースオリンピック1,500m決勝
3.57.25【第5位】
第24回全国都道府県対抗男子駅伝4区5㎞
14:21【区間3位】
2019年度(高校2年生)
第72回全国高校総体1,500m決勝
3.50.02【第9位】
第72回全国高校総体5,000m決勝
14.28.35【第9位】
第274回日体大記録会5,000m
13.51.91
第70回全国高校駅伝1区10㎞
29:06【区間8位】
第25回全国都道府県対抗男子駅伝5区8.5㎞
23:57【区間2位】
2020年日本陸上選手権クロスカントリーU-20の部8km
23:48【優勝】
2020年度(高校3年生)
ホクレンディスタンス大会第5戦千歳5,000m
13.36.89【高校記録樹立】
第9回東海大学記録会5,000m
13.34.74【PB】
第71回全国高校駅伝1区10㎞
29:33【区間14位】
まとめ 2024年パリオリンピックへ向かう石田洸介に迷いなし
常に世代のトップを走り続けてきた石田洸介選手。
これからは世代のトップではなく、長距離界のトップとして君臨する可能性を大いに秘めています。
そしてその先に見据えるのはパリオリンピックただ1点のみ。
箱根駅伝もその通過点に過ぎないのかもしれません。
そんな石田洸介選手に足りないものはただ一つ。
世界との戦い
この1点です。
そのためにも、2022年と2023年に連続で行われるであろう世界選手権に出場して、チームJAPANのユニフォームを着てもらいたいと思います。
まずは今年、U-20の10,000m日本記録である27:59:32を軽く塗り替えて欲しいですね。
そして来年の箱根駅伝では、駅伝にピークを合わせることなく区間賞をとるくらいの力強さを見てみたいです。
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