2020年3月8日、雨の降りしきる名古屋市内。
MGCファイナルチャレンジの最終戦である2020年名古屋ウィメンズマラソンが行なわれていた。
主役は、国内最高タイム2:20:29秒をたたき出した一山麻緒選手。
しかしそんな中、ひっそりと初マラソン日本歴代6位となる2:23:27のタイムを出した選手がいた。
その選手こそ、積水化学フェアリーズの伸び盛り、佐藤早也伽選手だ。
2017年4月、東洋大学を卒業した佐藤早也伽選手は、名門積水化学の門をたたく。
入社時はそこまで強い選手ではなかったが、積水に入社後めきめきと頭角を現す。
駅伝での区間賞や、ハーフマラソンでの優勝など実績を積み、いよいよマラソンへ。
そんな佐藤早也伽選手のこれまでの活躍を振り返ると同時に、2021年名古屋ウィメンズでの佐藤早也伽選手の走りを予想します。
あわせて、普段はうさまる好きで有名な、佐藤早也伽選手のプロフィールも紹介します。
佐藤早也伽 2021年名古屋ウィメンズで優勝&自己ベスト更新なるか
前半はとにかくペースメーカーの後ろで息をひそめて
佐藤早也伽選手は今回が2回目のマラソンということで、優勝候補とみられている
- ダイハツ 松田瑞生選手
- 日本郵政 鈴木亜由子選手
- 天満屋 小原 怜選手
上記の3名とはマラソンの経験が違います。
特にこの3名はMGCにも出場しており、その点で佐藤早也伽選手のマラソンの経験値は圧倒的に不足しています。
しかしこれを逆手に取れば、まずは何も考えず、ペースメーカーにつくことだけを考えて走ればいい、ということにもなります。
まず前半の20キロは、しっかりペースメーカーの後ろに張り付くことが大事だと思います。
ペースメーカーが外れても鈴木選手の後ろあたりで粘れれば
この記事を書いている2月18日時点では、ペースメーカーが何キロまで引っ張るかの情報は伝わっていません。
ペースメーカーが外れた後も、勝ちに行くのであれば、自分のペースで行くより誰かの後ろについた方が得策です。
特に郵政の鈴木選手は一定ペースでずっと押していく選手なので、後ろにつくことで鈴木選手からリズムをもらって走れば、うまく体力を温存して走ることができるはずです。
佐藤早也伽選手の良いところは、きついところからもハイペースで粘れることなので、とにかくトップにいる選手についていくことで、自己ベスト更新&優勝も見えてくるのではないでしょうか?
ラスト勝負になったら、佐藤早也伽選手のスパート力は2020年プリンセス駅伝の1区区間記録の実績が証明しています。
35キロまでトップについていければ、優勝の確率はかなり高いのではないでしょうか?
佐藤早也伽 2020年日本選手権10,000mで新谷選手の日本記録をサポート 自身も自己ベスト更新
2020年12月4日に行われた日本選手権10,000mで、佐藤早也伽選手はスタートから勢いよく飛び出します。
現地で見ていた私も、新谷選手以外の人が飛び出すなんて変な展開だな~思っていました。
1,000mを3分2秒のハイペースで通過し、このままいけば日本記録ペース。
2番手に新谷選手が続く展開となり、同じ積水の選手が1,2番となった瞬間に、「あっ」と思いました。
佐藤早也伽選手は新谷選手を引いてるんだ! と。
実際その通りで、2,000m手前まで佐藤早也伽選手はトラック1周を73秒~74秒の高速で引き続けます。
そして2,000mに差し掛かるホームストレートで、新谷選手は佐藤早也伽選手の前に出ます。
佐藤早也伽選手にリズムをもらった新谷選手は、その後もハイペースで飛ばし続け、30:20:44という驚愕の日本記録をたたき出しました。
レース後、新谷選手は真っ先に佐藤早也伽選手に駆け寄り、感謝の意を伝えます。
今回の件は、新谷選手のコーチである横田真人さんから、積水の野口監督に相談がいき、クイーンズ駅伝終了後に野口監督から佐藤早也伽選手に告げられたそうです。
そして佐藤早也伽選手は嫌がることもなく、笑顔で引き受けたとのこと。
そんなストーリーがあったとは、レース時はわかりませんでした。
この話をレースの後に知った時、私はレースの結果以上に感動して涙をこぼしました。
こういった「ストーリー」が、私たちを感動させてくれるんですね。
快く引き受けた佐藤早也伽選手に感謝です。
ぜひ、こちらから感動のレースをご覧ください!
佐藤早也伽 2020年3月8日 初マラソンとなる名古屋ウィメンズで初マラソン日本歴代6位となる2:23:27の好走
佐藤早也伽選手の初フルマラソンは、2020年3月の名古屋ウィメンズマラソンでした。
この大会で佐藤早也伽選手は、30㎞まで先頭集団に食らいつき、その後一山選手の猛烈なスパートには対応できませんでしたが、それでも最後まで落ち着いたレース運びを見せました。
急に佐藤早也伽選手がクローズアップされたような感じではありますが、佐藤早也伽選手はこのレースの前から頭角を現しているのです。
- 2018年プリンセス駅伝1区区間賞
- 2019年日本実業団ハーフマラソン優勝
- 2019年実業団選手権10,000m第2位
- 2019年クイーンズ駅伝3区区間3位
2019年2月に山口県で行なわれた実業団ハーフでは、積極的なレースを見せ、見事70分を切る1:09:27秒で優勝しています。
そしてその年のクイーンズ駅伝では、エース区間と呼ばれる3区で日本代表選手相手に堂々の区間3位の走りを見せます。
初マラソンを走り終えた佐藤早也伽選手はツイッターで初マラソンの感想をこう述べています。
マラソンが楽しいなんて、なかなか言えませんよね。
大物の予感がする佐藤早也伽選手、まだまだ活躍を見せてくれそうです。
佐藤早也伽選手のプロフィール
- 名前:佐藤 早也伽(さとう さやか)
- 生年月日:1994年5月27日
- 出身:宮城県大崎市
- 趣味:散歩・買い物
- 進路:大崎市立鹿島台中学
常盤木学園高校
東洋大学
積水化学
※佐藤早也伽-Wikipediaより参照
陸上を始めた理由が面白い中学時代
佐藤早也伽選手は中学1年生の時から陸上を本格的に始めますが、始めた理由が大変面白かったので紹介します。
陸上部に入ったら、送り迎えを毎日お母さんがしてくれるから
だそうです。面白いですね。
そんな佐藤早也伽選手ですが、中学時代は思ったような結果は残していません。
公認記録で残っているのは、3年生の時に宮城県中学駅伝に出場した記録のみです。
2009年宮城県中学駅伝
佐藤早也伽選手結果
1区3.02km
10:23【区間9位】
都道府県大会に出場して活躍した高校時代
高校は、仙台市青葉区の常盤木学園高校に入学します。
常盤木学園高校はスポーツに強い学校で知られていて、とりわけ女子サッカー部は大変強く、元日本代表で2011年ワルドカップ優勝メンバーの鮫島彩さんなどを輩出しています。
確かな情報はありませんが、佐藤早也伽選手も、もしかしたらスポーツ推薦で入ったのかもしれません。
高校時代はトラックで全国大会に出ることはありませんでした。
駅伝も、常盤木学園高校として全国規模の大会に出ることはありませんでした。
宮城県は常に仙台育英高校という超強豪校が存在しているため、全国大会に出ることはなかなか難しかったようです。
しかしながら、個人では3年連続で都道府県駅伝のメンバーに選ばれる活躍をします。
都道府県女子駅伝
佐藤早也伽選手結果
2011年5区4.1km 14:13【区間26位】
2012年4区4.0km 13:30【区間25位】
2012年2区4.0km 13:10【区間24位】
区間上位の成績は残せませんでしたが、年々タイムも区間順位も上がっており、成長していることがわかります。
東洋大学進学後も少しずつ成長を続ける
佐藤早也伽選手は大学でも陸上を続けることを決め、越境して東洋大学に進学を決めます。
1年目からレギュラーを任され、全日本大学女子駅伝や富士山駅伝にも出場。
もちろん都道府県駅伝の宮城県メンバーにも選ばれます。
そして2年目の2014年9月に行われた日本インカレ5,000m決勝で、初の15分台となる15:58:85をたたき出します。
結局これが大学生の5,000mベストタイムとなってしまいますが、
- 全日本大学女子駅伝
- 富士山駅伝
- 都道府県駅伝
3つの駅伝を大学4年間、皆勤賞で参加します。
区間も徐々にエース区間や長距離区間を任されるように。
ケガや不調に悩む選手が多い中、このようにレースに出場し続けるというのも才能の1つだと思います。
陸上を離れた佐藤選手はかわいい女性
陸上を1歩離れると、佐藤早也伽選手は普通の女性の素顔に戻ります。
とくにLINEスタンプキャラのうさまるが大好きで、定期的にツイートをしています。
寮の部屋中にうさまるやその他のお人形がところ狭しと並んでおり、競技で見せるカミソリのようなラストスパートとは程遠い私生活のようです。
このギャップが男子陸上ファンからはとても好感が高く、陸上界きっての癒しキャラとなっているようです。
同じ積水の新谷さんとは性格も真逆で、積水の「オセロコンビ」と呼びたくなります。
佐藤早也伽 主な記録
自己ベスト(2021年2月現在)
- 1,500m:4:27:25(2017年)
- 3,000m:9:05:75(2020年)
- 5,000m:15:16:52(2020年)
- 1,0000m:31:30:19(2020年)
- ロード10㎞:33:22(2020年)
- ハーフ:1:09:27(2019年)
- フルマラソン:2:23:27(2020年)
主な記録と結果
2009年度(中学3年生)
2009年宮城県中学駅伝1区3.02㎞
10:23【区間9位】
2010年度(高校1年生)
2010年宮城県高校駅伝2区4.0975㎞
14:31【区間2位】
2010年東北高校駅伝2区4.0975㎞
15:02【区間11位】
都道府県駅伝宮城選考会5,000m
17:13:58【第8位】
第29回全国都道府県女子駅伝5区4.1075㎞
14:13【区間26位】
2011年度(高校2年生)
宮城県新人競技会3,000m
9:47:97
2011年宮城県高校駅伝1区6㎞
19:28【区間2位】
2011年東北高校駅伝1区6㎞
19:49【区間5位】
第27回東日本女子駅伝3区3㎞
10:17【区間10位】
都道府県駅伝宮城選考会5,000m
17:00:18【第7位】
第30回全国都道府県女子駅伝4区4㎞
13:30【区間25位】
2012年度(高校3年生)
2012年宮城県選手権3,000m
9:29:70【優勝】
2012年宮城県高校駅伝1区6㎞
19:53【区間賞】
2012年東北高校駅伝2区4㎞
12:56【区間2位】
第28回東日本女子駅伝1区6㎞
19:47【区間15位】
都道府県駅伝宮城選考会5,000m
16:25:74【優勝】
第31回全国都道府県女子駅伝2区4㎞
13:10【区間24位】
2013年度(大学1年生)
第92回関東インカレ5,000m決勝
16:31:43【第13位】
第82回全日本インカレ5,000m決勝
16:36:73【第19位】
第31回全日本大学女子駅伝1区6.6㎞
21:36【区間17位】
第29回東日本女子駅伝5区4.1075㎞
17:40【区間12位】
第235回日体大記録会5,000m
16:12:16
2013年富士山女子駅伝6区6.8㎞
22:59【区間5位】
第32回全国都道府県女子駅伝1区6㎞
19:55【区間20位】
2014年度(大学2年生)
第93回関東インカレ5,000m決勝
16:25:85【第11位】
第83回全日本インカレ5,000m決勝
15:58:85【第8位】
第32回全日本大学女子駅伝1区6.6㎞
21:55【区間20位】
第30回東日本女子駅伝3区3㎞
10:08【区間5位】
2014年富士山女子駅伝4区9.4㎞
33:24【区間18位】
第33回全国都道府県女子駅伝1区6㎞
21:00【区間44位】
第18回日本学生女子ハーフマラソン選手権
1:13:50【第12位】
2015年度(大学3年生)
第94回関東インカレ10,000m決勝
34:17:11【第5位】
2015年ホクレンディスタンス北見5,000m
15:59:46
第84回全日本インカレ5,000m決勝
16:27:67【第14位】
第33回全日本大学女子駅伝5区9.2㎞
31:14【区間11位】
2015年富士山女子駅伝4区9.4㎞
34:19【区間20位】
第34回全国都道府県女子駅伝1区6㎞
19:48【区間22位】
2016年度(大学4年生)
第95回関東インカレ5,000m決勝
16:26:68【第5位】
第95回関東インカレ10,000m決勝
33:28:94【第3位】
第85回全日本インカレ5,000m決勝
16:55:51【第23位】
第34回全日本大学女子駅伝5区9.2㎞
30:29【区間8位】
第32回東日本女子駅伝9区10㎞
34:33【区間14位】
2016年富士山女子駅伝5区10.9㎞
37:22【区間8位】
第35回全国都道府県女子駅伝9区10㎞
34:05【区間31位】
2107年度(積水化学)
第65回全日本実業団選手権5,000m
15:44:12【第13位】
2017年プリンセス駅伝6区6.695km
22:19【区間8位】
第37回クイーンズ駅伝2区3.9km
12:35【区間7位】
第36回全国都道府県女子駅伝9区10㎞
32:29【区間10位】
2018年度(積水化学)
2018年ホクレンディスタンス網走大会10,000m
32:55:13
2018年プリンセス駅伝1区7km
22:36【区間賞】
第38回クイーンズ駅伝1区7km
22:26【区間6位】
第37回全国都道府県女子駅伝9区10㎞
32:13【区間7位】
第47回全日本実業団ハーフマラソン
1:09:27【優勝】
2019年東京マラソン
DNF
2019年度(積水化学)
第67回兵庫リレーカーニバル10,000m決勝
31:59:64
第30回ゴールデンゲームズinのべおか5,000m決勝
15:27:47
第103回日本選手権10,000m決勝
33:00:83【第11位】
第103回日本選手権5,000m決勝
15:30:41【第5位】
第67回全日本実業団選手権5,000m
15:54:42【第8位】
第67回全日本実業団選手権10,000m
32:12:89【第2位】
2019年プリンセス駅伝3区10.7km
34:56【区間3位】
第39回クイーンズ駅伝3区10.9km
34:55【区間3位】
第38回全国都道府県女子駅伝9区10㎞
32:07【区間6位】
2020年名古屋ウィメンズマラソン
2:23:27【第5位】
2020年度(積水化学)
2020年ホクレンディスタンス士別大会3,000m
9:05:75【PB】
2020年ホクレンディスタンス深川大会5,000m
15:26:66
第68回全日本実業団選手権5,000m
15:16:52【第5位】【PB】
2020年プリンセス駅伝1区7km
22:22【区間新記録】
第40回クイーンズ駅伝1区7.6km
23:53【区間3位】
第104回日本選手権10,000m決勝
31:30:19【第3位】【PB】
佐藤早也伽選手は2024年パリオリンピックマラソン代表の最有力候補
今や飛ぶ鳥を落とす勢いの佐藤選手。
2019年からの急な飛躍には、誰しもが驚きました。
そしてまだ底を見せていない印象があります。
おそらく5,000mで14分台、10,000メートルでは30分台の実力を秘めているはずです。
そして何より彼女の持ち味が生きるのは、マラソンでしょう。
きつくなったところからフォームを崩すことなく粘れ、かつそこからラストスパートを掛けられる力みのないフォームは、フルマラソンに相性がとてもいいと思います。
私の予想では、2024年パリオリンピックのマラソン代表の1人は、佐藤選手だと思っています。
そんな佐藤選手の活躍から目が離せませんね。
コメント